店舗の原状回復工事

店舗の原状回復工事

店舗の原状回復工事とは?

© Matthias Buehner

物件を賃貸すると、退去する際には原状回復しなければなりません。店舗の場合は、借主が負担することが一般的で、契約書にも記載されています。原状回復という通り、入居前の元の状態に戻す作業が必要です。特に大きく間取りを変更した場合は、間仕切り壁だけでなく、天井や床の改修工事も行う必要があります。

店舗の原状回復工事には、看板や設備の撤去、床・壁・天井の修繕などの「内装解体工事(原状回復工事)」、梁や柱、外壁や屋根など以外をすべて取り除いて建物の構造だけの状態にする「スケルトン工事」、工事の過程で出る廃棄物を処理する「廃棄物処理」などがあります。その他、水道・電気・ガス・電話回線の設備工事を行うこともあります。

原状回復工事かスケルトン工事かで費用も大きく変わってきます。しかし、原状回復工事としてスケルトン工事まで含めて求められることも多く、その際は内装解体工事だけでなく、スケルトン工事、廃棄物処理までが一連の作業となります。

工事の種類は?

1. 内装解体工事
店内の設備や間仕切り壁などを取り除きます。

2. 修繕工事
壁や床に損傷があれば修復します。油やタバコのヤニなどで汚れている場合は、ペンキを塗り直したり、カーペットやクロスの張り直しを行います。

3. 設備工事
電気周りの配線、ガス管やダクト設備などの修復を行います。漏電やガス漏れがないか入念に確認し、問題があれば修理します。

4. スケルトン工事
建物の基本的な構造体以外すべての内装を解体します。床や壁はコンクリート剥き出しの状態、天井は配線が見える状態にするのが一般的です。

5. 廃棄物処理
解体処理で出た廃棄物を処理します。各自治体の廃棄物処理の法令や条例を遵守し、処理を行う必要があります。廃棄物を不法投棄されると、依頼主にも責任を問われる可能性がありますので、料金だけで判断せず、信頼できる業者に依頼することがポイントです。廃棄物を分別して、リサイクル可能なものはリサイクルを行い、処理手順を明確に文書化してくれるような優良な業者を選びましょう。

費用はどれくらいかかるの?相場は?

店舗の坪数                      原状回復費用の相場
10坪未満(13~14席程度の小規模店舗)    11万円未満
10~20坪(15~30席程度の小規模店舗)   21万円~43万円
21~30坪(31~45席程度の中規模店舗)   50万円~71万円
31~40坪(46~60席程度の中規模店舗)   71万円~92万円
41~50坪(61~75席程度の中規模店舗)   88万円~108万円
51坪以上(大規模店舗)          248万円~

カフェや喫茶店などの軽飲食店、テイクアウト中心で人の出入りが少ないタイプの飲食店などは、原状回復費用を安く済ませられますが、間仕切りが多い、喫煙可にしていた、厨房位置を大きく変更した、排気ダクトの数が多く複雑な構造をしている、排水設備が詰まっている、店舗が地下や2階以上にあって搬入搬出がしにくいなどの要因があると、原状回復費用が高めになる傾向にあります。

費用を押さえるためには?

店舗を退去する際には、原状回復工事が必要となり、その費用は借主側が負担することになります。退去するのは、多くの場合、経営がうまくいかなくなった時なので、その費用はなるべく抑えたいものです。原状回復工事は、工事の種類によって費用が大きく変わりますので、必ず契約時に確認しましょう。さらに工事業者も、貸主の指定業者でなく、借主が選べるような契約をした方が、経済的にはお得になります。また、複数の業者から見積もりを取ることが重要です。

原状回復工事の費用は店舗のタイプや立地、飲食店の種類などさまざまな要素で増減しますが、以下のような店舗は、退去前のハウスクリーニングや修理の費用を抑えられるでしょう。

・パーテーションや造作物が少ない

・厨房設備の位置や大きさを変更していない

・排水や排気の設備の状態が良い

・壁材や床材の損耗が少ない

・店内を禁煙にしていた

店舗の原状回復工事の費用は、施工方法や使用する部材によっても変わってきます。貸主によって、施工業者が指定される場合には、借主が業者を選ぶことができません。

しかし、交渉ができる場合もあります。複数の業者に相見積もりを取り、貸主が指定する業者の見積もりと比較し、単価や工事日数などを検討した上で、価格交渉することをお勧めします。他社の見積もりを見せることによって、指定業者の工事費用が大幅減額されることがあります。

原状回復で気を付けることは?

通常の使用によるものと判断できず、明らかに手入れ不足である状態だと判断された場合には、借主が原状回復工事をすることになっています。例えばタバコのヤニや臭い、油汚れ、床の損傷などがそれにあたります。また、業種によっては大掛かりなレイアウトの変更や様々な設備を設けることがあります。厨房などを設置した場合には、建物が傷んでしまう割合も大きくなります。

店舗などの事業用の賃貸契約では別に契約内容を貸主と借主の当事者間で決める特約を定めることができるようになっています。したがって、借主の原状回復義務の範囲が広くなる可能性もあるので、トラブルを避けるためにも、契約書の内容をしっかりと確認しておくことが大切です。

退去時には入居時と同じ状態に戻すことになるので、入居時に写真を撮っておくとよいでしょう。当初使用されていた内装材などについても記録しておくと原状回復工事の際に役立ちます。

また、店舗物件の契約満了時までに必ず工事を終了させ、物件を貸手に引き渡さなければなりません。返却日ぎりぎりに完了する日程でスケジュールを組むと、解体作業で思わぬ事態が発生した場合、工事が遅れ、返却日に間に合わないこともあり得ます。家賃がさらに1カ月分発生したり、契約違反で違約金が発生したりすることもあります。工事は余裕を持って行える日程を組むことが重要です。

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